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トヨタ生産方式 大野耐一著 ダイヤモンド社











■紹介
 30年以上も前の1978年に第一刷発行。
 2008年8月7日時点で、107刷という恐ろしい数字を叩き出している。

 いざなぎ景気が終わり日本が不況の波にのまれているときに、
 トヨタは独自の生産方式によりこの不況を力強く突破している。
 トヨタ生産方式には、どういった思想があり、どういった改善をしてきたのか、
 当時トヨタ副社長だった大野耐一さんが記載している。

 このトヨタ生産方式、改善方法は業種などが異なったとしても、
 自分に置き換えて考えることができれば、効率化の一つ道具となりえる。
 それゆえ誰にでも勧めることのできる良書。
 
■要約
 トヨタ生産方式とは?
  基本思想は「徹底したムダの排除」。
  二本柱に「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」がある。
  (背景として当時三年でアメリカに追いつくことを目標としていた。
   このときの日本の生産性はアメリカの8分の1。)

  ジャスト・イン・タイムとは?
   既存の「前工程が後工程へ物を供給する」という生産ラインを、
   「後工程が前工程に、必要なものを、
    必要なときに、必要なだけ取りに行く」という、
   何をどれだけ欲しいのかを示している。
   ここでかの有名な「かんばん」を利用している。

  自働化とは?
   人がいなくとも、機械に生産させる。
   ただしこのときただ生産させているのではなく、
   バカヨケで異常検知し、アンドンで生産ラインを見える化し、
   人をその場に張り付かなくてもすむようにしている。
   (これを自動化ではなく、自働化と呼んでいる)
  
   アンドンとは運転中には緑に、異常時には赤に点灯する表示板。
   バカヨケとは機械が自動で異常検知する仕掛け。

 そして上記二本柱よりトヨタ生産方式では、
 以下のムダを排除し生産性を向上させている。

  省力化:大型機の導入により、人間の力を省く。
   ↓
  省人化:省力化によって0.9人減っても、
   ↓  他に人を回せないため原価低減に結びつかない。
   ↓  人を1.0人減らしてこその省人化。
   ↓
  少人化:生産量の増減に比例して、人の出し入れを可能とする。
      →多工程待ちとする。
  
  多工程待ちとは?
  たとえば、旋盤、フライス盤、ボール盤が3台ずつ、計9台あったとする。
  ここで一人の作業者が旋盤を3台扱うことを「多数台持ち」と言う。
  (フライス盤、ボール盤も同様)
  それに対し、一人が一台の旋盤、フライス盤、ボール盤を扱い、
  多数の工程を担当すること。
 
 省くべき上記の「ムダ」とは?
  ①作り過ぎのムダ
  ②手持ちのムダ
  ③運搬のムダ
  ④加工そのもののムダ
  ⑤在庫のムダ
  ⑥動作のムダ
  ⑦不良品を作るムダ

 「ムダ」を現実にどうやって省くか
   バカヨケ
    ①作業ミスがあれば、品物が冶工に取り付かない仕組み。
    ②品物に不具合があれば、機械が加工を始めない仕組み。
    ③作業ミスがあれば、機械が加工を始めない仕組み。
    ④作業ミス、動作ミスを自然に修正して、加工を進める仕組み。
    ⑤前工程の不具合を後工程で調べて、不良を止める仕組み。
    ⑥作業忘れがあれば、次の工程が始まらない仕組み。
    など。
   標準作業の徹底
    標準作業とは以下三要素で成り立つ
    ①サイクルタイム:一つを何分何秒で作らないといけないか示す
    ②作業順序:時間の流れとともにある作業
    ③標準手持ち:作業を続けるために必要な最少な工程内の仕掛品
   生産の平準化
    製品の流れ方がバラツクほどムダは多くなる。
    トヨタでは各最終工程は同じものをかためて流さずに、
    一台一台、違った車を作る前提で、平準化生産を行っている。
    →そのためにロットを小さく、段取り替えをすみやかにしている。

■抜粋(○:完全抜粋、●:中略抜粋)
○世の中のことはすべて
 歴史が立証すると確信するからです。(まえがきP.3)

●一つの事例だけをとって現場に応用しても
 有効な改善ができないかもしれません。
 頭を使いながら本書を熟読玩味されれば、
 たとえ業種や形態が異なっていても、
 何が重要であるか、いかなる改善を行うべきかが判ると思います。
 (本書によせてP.7)

●生産現場の風当たりはとうぜん強かった。
 仕事の量や作業時間が増大するわけではないが、
 当時の熟練工は良くも悪くも職人気質旺盛な連中であったから、
 抵抗も多かったはずである。
 短期間に急激な変化を押し付けるのは得策でないと考え、
 あせらずにじっくりいく気持ちであった。(P.23)

○手をとって教え込まなければならず、
 これが監督者に対する信頼感につながる(P.43)

○チーム・ワークとか、その他いろいろの理由がからむと、
 かえって少人数のほうが勝つ場合がでてくるのではないか。(P.46)

○スポーツと仕事とはいろいろな共通点がある。
 私がいちばん大事だと思う共通点は、
 スポーツでも仕事でも練習に練習を重ねること、
 訓練に訓練を重ねることである。
 理論を頭で理解するというのは問題ではない。
 体で覚え込むことである。
 訓練を耐え抜くだけの根性を持つことが、勝負に勝つ道である。
 (P.48-49)

○”余力”を生みだせ(P.100)
 簡単にいえば、余力のある場合は、
 遊んでいる人、遊んでいる機械を使うのであるから、
 費用は新たに発生しない。つまりタダである。
 
 内製・外製について余力を考えてみる。
 原価比較される場合が多いが、
 内製に余力があれば、実際に新しく発生する費用は、
 生産の多さに応じて増える変動費だけである。
 したがって原価比較するまでもなく、内製が有利である。

 トヨタ生産方式では、さらに一歩進めて、
 余力を捻出するような改善も心がけている。

○人間味のある環境を作ることによって、
 初めて「少人化」も本物になる。(P.123)

○シリンダー五、六百個ペケにして鋳つぶしてしまいました。
 同じものを千個作ると、
 体外の職工は手が馴れて間違いの無い物を作る様になります。
 最初の数百個の中には良い物も出来ますが、
 手が定まる迄は是を捨てる位の覚悟は必要であります。(P.150)

●間違った機械を買わない様にわざわざ米国まで行って調べる位の事は当然の事であります。
 高級な機械を買っても其れが満足につかいこなせるであろうかと言う事が次に来る問題であります。
 それから工具の研究と熟練とが必要です。
 そこに大量生産に馴れた工具の設計が必要になります。
 この設計と製作に三年や四年かかるのは当然のことであり、
 豊田が製作機械を買ってから三年間一体何をしていたがお解りになりましょう。

 何百万と言う機会を買ってから凡そ三年間何百人と言う人が一生懸命に働いて
 自動車を一台も市場に出さなかったら
 体外の株主はいったい自動車出来るのかどうか心配し出し、
 当局者も何とか一台でも二台でも作らなくては申訳が無い様な気がします。
 然しこんな風にして出来た自動車では満足されません。

 こんな事業を向う見ずにやる者は余程アホーだと私自身も思って居ます。

 当然儲かる事業を当然な方法でやってゆくよりも、
 誰も余りやらない又やり難い事業をものにして見る所に人生の面白味があるもので、
 出来なくて倒れたら自分の力が足りないのだ。
 潔ぎよく腹を切ったら良いではないか。
 出来るところ所までやって見よう、
 どうせやるなら世人の一番むずかしいという
 大衆乗用車を作って見ようと言う立場からやり掛かったのです。
 (P.152-153)

●ヘンリー・フォード一世の標準(スタンダード)への見解(P.182)
 標準のためにものをつくることで満足するようになり、
 人間の能力も鋭くなるどころか、かえって鈍くなるからである。 

○「動き」を「働き」にする(P.220-221)
 いくらよく動いても、働いたことにはならない。
 「働く」とは工程が進み、仕事ができ上がることで、
 ムダが少なく効率の高いことである。

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