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「知の衰退」からいかに脱出するか? 大前 研一 光文社












■感想
知の衰退とは、
”自分で考える力”の衰退を表現しているのだと思う。

では考える力とは何だろうか。
1+2のような単純な計算を早く回答し高得点ができたとしても、
それを計算力とは呼んでも、考える力とは呼ばないだろう。

では問題を 1+2=□ を □+□=3 にすればいいのか?

違う。
たしかにこういった方法を取ることで回答の多様性や、
学ぶことに対する楽しさは増すだろう。
だがこれは単純に計算方法が変わっているだけで、
考える力が表出しているわけではない。

数学で例えるなら、
池の鯉の繁殖率を微分方程式で解くことによって数年後の環境問題を考えるとか、
確率統計を用いて人の心の差を定量的に表すとか、
問題がどこにあって、どうやって解決すればいいのか述べられることだと思う。

つまり考える力とは、一つ一つの事象対し、
自分の中で噛み砕いて理解し、意見を出すことだと思う。


この本は日本人へのメッセージとなっていて、
日本の政治、教育、メディアと日本人の関係から、
日本人の知の衰退の現実と意見が述べられている。

この本を読んだことによって、
一つの意味のある意見を得ることができる。
ここをスタート地点として考える力を育んでいくことになるだろう。
もちろん簡単に考える力の養い方も載っている。

”自分で考える力”から、
”考えたことを実行する勇気”を持って、
”結果がでるまで続ける執念”で、
ユニークな生き方をして欲しいとの願いが込められているのだと思う。


■抜粋(○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
○本を読むのに必要とした時間を1とすれば、5ぐらいの時間を
 『何が書いてあったのか』
 『それは自分にとってどういう意味があるのか』
 『自分の会社にとってどういう意味があるのか』
 『われわれの社内にとってどういう意味があるのか』
 そういうことを考える時間に充てなさい(P.210)

●自分の脳の中に棚を作る(P.235)
 ・毎週土曜に3時間Googleで自分の関心があることついて調べる
 ・3時間調べたことを、
  「要はこういうこと」、
  「それなら自分はこう考える」、
  とレポートにまとめる。

○あらゆる技術は軍事目的で開発され、ポルノ目的で広まる(P.237)

●偏差値による序列化は「教育」ではなく「訓練」(P.257)
 大事なのは
 ”自分で考える力”
 ”考えたことを実行する勇気”
 ”結果がでるまで続ける執念”
 したがって、「自分はこれをやりたい」、「自分の人生をどうしたい」、
 といった願望を学生から引き出す教育がどうしても必要。

○本当に改革を求めていれば、
 「やります」という言葉だけの人間を選ぶわけがないからだ。(P.344)

●選挙で「中国、インドに負けない人材をつくります」とか、
 「IT技術を使って役所のシステムをERPでもってカバーします」などと言ったら、
 当選などできないに決まっている。
 ・・・中略・・・
 メディアと有権者が好むのは
 「あの人ならやってくれそうだ」というイメージだけだからだ。(P.349)

●「Skypeはこれから世界にどんな影響を与えるのか?」
 ・・・中略・・・
 Skypeはルクセンブルグの小さな会社が開発したIP電話のソフトだが、
 いまやこの無料ソフトで世界中の人がコミュニケーションしている。
 ならば、それを使い、
 それが社会にどんな影響を与えていくのか自分なりに考えておかないと、
 この話題には参加できない。(P.411)

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